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モバゲー、公取委立ち入りの深層  巨大SNS、火花散る争奪戦(前編) [ニュースサイト]

突然の立ち入り検査。ではあったが、予期できないことでもなかった。「モバゲーを閉め出されたソフト開発会社が公取委に訴えたらしい」。そうした噂は9月半ば頃から業界内でささやかれていた。いったい、何があったのか。時計の針を、夏に戻そう。
「お話ししたいことがあるので、来ていただけますか」。2010年8月上旬、モバゲーにソーシャルゲームを提供している都内のあるソフト開発会社は、そう担当者から告げられ、DeNAの本社近辺に出向いた。出迎えたのは担当者とその上司。モバゲーに提供しているゲームの販促か何かの話だと思いきや、おもむろに、こう言われたと言う。
「モバゲーかGREEか、どちらにつくんですか」
折しもSNS各社がプラットフォームを外部のコンテンツ事業者に開放し、有料課金型のアプリケーションを提供できるようにする「オープン化」に突き進んでいた時期。開発会社が呼ばれたのは、GREEの本格的なオープン化が1週間後に迫っていた頃だ。オープン化は、ミクシィが09年8月に、DeNAが10年1月に実施済みで、多種多様なアプリがサイト内の活性化を誘っていた。
(中略)
DeNAに呼ばれた前出のソフト開発会社は、売り上げ規模が年間数十億円と、業界では比較的有力とされている会社。モバゲーに複数のゲームを提供する一方、すでに6月の段階でGREEにも別のゲームを提供しており、8月からはモバゲーに提供していたゲームと同じタイトルをGREEでも提供すべく準備していた。その矢先の呼び出しだった。
「これ以上、GREEにゲームを出すな、というメッセージだと受け取った」。開発会社の役員はこう話す。GREEに出した場合の処遇については特に言及がなかったため、この開発会社はあえて回答を避け、予定通り8月10日、GREEにモバゲー向けと同じタイトルを出した。だが、「報復」はあった。
開発会社が異変に気づいたのは、8月10日の朝。モバゲーに提供していたゲームに新規のユーザーを運ぶ「導線」が断たれていた。アプリが消されたわけではないが、事実上それに近い状態となっていた。
あるタイトルは、すでにモバゲーで100万人以上のユーザーが遊んでおり、前日まで人気ランキングにも入っていた。だがこの日、ランキングに名前はなかった。モバゲーのトップページから、「ゲーム」「カテゴリ」とたどれば行き着くはずなのに、その道からも名前が消えていた。タイトル名を検索窓に入れても、ヒットしない。
外部の事業者向けの管理ページを見てみると、そこには「強制制限公開」の文字。「理由はわかりつつ、でも理解はできないので、一応、理由を問い合わせた」。すると、モバゲーの担当者はこう回答したと言う。「わかっているでしょ。察してください」
モバゲー上からゲームが消えたわけではなく、既存のユーザーは遊ぶことができる。新規でも、既存ユーザーからの紹介であれば、遊ぶことが可能。が、強制制限公開の措置は開発会社に大きな打撃を与えた。
1日数千の単位で増えていた新規ユーザー数は、時間がたつにつれ、3桁、2桁へと激減。既存ユーザーの動きも鈍くなり、月間数千万円に達していた課金売り上げは毎月、半減していったという。今では「モバゲーからの収入はほとんどゼロに近い状態で、目標を大幅に修正しなければならなくなった」
はっきりと報復措置まで踏み込んだ通告を受けたソフト開発会社もあった。やはり、8月10日の1週間ほど前、先の開発会社と似たような規模、状況にあった開発会社は、モバゲーの担当者からこう言われたと話す。
「GREEに今後アプリを出すのであれば、モバゲーからのトラフィックをあてることはできなくなってしまいます。ご検討ください」
この開発会社もまた、6月の段階でGREEにゲームを提供しており、8月からはさらにゲームを投入すべく、準備を進めていた。モバゲーとGREEの両にらみでゲームを開発し、コストを回収する計画だったため、おいそれとGREEへの提供をやめるわけにはいかない。8月10日、モバゲーで実績を積んだタイトルをGREEでも展開し始めると、やはり先の開発会社と同じく、強制制限公開の措置を受けた。
「どうにか元へ戻してほしい」。そうモバゲーの担当者に懇願すると、「事前にお伝えした通り、そういう方針なので変えられません。(戻すには)GREEのアプリについて、検討してください」との返答。「GREEから引き上げろということですか?」と問うと、担当者はこう言った。「こちらからはそういうことは言えません」
この開発会社の役員は、「モバゲーの担当者も上司からきつく言われているようで、交渉の余地はない、と感じた。でも、メールでのやりとりは避けていたし、言葉は慎重に選んでいたので、問題になる可能性は認識していたのでは」と話す。こうしたDeNAの強硬な姿勢が問題となって表面化するまで、さほど時間はかからなかった。
「モバゲータウンのオープンゲームの囲い込みが始まった!」。技術系ブログの「TechCrunch(テッククランチ)」日本版が、そうした見出しでDeNAの措置を報じたのは8月20日のこと。記事は、こう伝えている。
「DeNAは、7月下旬から8月上旬にかけてソーシャルゲームのプロバイダーなどに対して、競合するGREEにソーシャルゲームを今後提供した場合には、モバゲータウンで提供するゲームにトラフィックを流さないと複数社に通達した。ただ、GREE以外のmixiなどにはゲームを提供してもいいのだという」
「取材した十数社は異口同音に上記のような説明を受けたという。たぶん、それ以上の会社に同様の説明はあったようだ」
「DeNA側から前述のような説明を受けながら、8月10日にGREE上にゲームを提供したら、モバゲータウンに提供していたゲームが忽然と消えたという話もある。もちろん既存のユーザーは遊べるようになっているのだが、モバゲータウン上でゲームを検索してもでてこなくなったという」
この記事が出た直後に、導線を遮断されたある開発会社のゲームは、検索からのみ新規ユーザーがたどり着けるよう復活した。しかし、タイトル名を決め打ってゲームを探すユーザーは、そうはいない。この開発会社の役員は、「新規は10分の1くらいまで落ち込んだ。既存ユーザーのおかげで売り上げがゼロになることはなかったが、それでもピーク時の4分の1程度まで下がっている」と話す。
ただし、こうした措置にまで至ったソフト開発会社は、数社程度だと見られる。言い換えれば、DeNAから通告を受けながらグリーへの提供を強行した会社は少ないということ。DeNAの働きかけは、グリーの営業戦略に如実に影響を及ぼした。
以上、2010/12/14 日経Web刊より転載
おもしろいけど、とても長い記事でした。転載したのは、全体の半分以下です。
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