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「ゆとりですがなにか」についての覚え書き 感想 まとめ 印象的なシーンとセリフ [テレビ番組]

日本テレビ 毎週日曜日22:30-23:25
2016年4月17日スタート
演出 水田伸生 ほか
脚本 宮藤官九郎
最高のシナリオ密度、映像的にもハイレベルなドラマ。視聴率がどれだけ低くても、ギャラクシー賞はもらえそう。ようやくクドカンの代表作ができたかという感じ。これはクドカンファンにとってめでたいこと。子供向けだった「あまちゃん」がクドカン代表作というのでは、ファンとして悲しいものがあるので。
スピーディーなストーリー展開のなかに、適度な笑いを盛り込んだシナリオは、密度が極めて高い。他のドラマは薄い内容を引き延ばして、無理やり時間を稼いでいるような気がしてくるほど。
第1回の映像・演出に関しては、これまでに水田氏が撮った3本のクドカン脚本映画よりハイレベルなのでは。丁寧過ぎるほど、細かなカット割り。長回しとの使い分けも絶妙。
あえて画質を捨てて、軽いカメラを使うことで、画面の構成・人物の動き・演技の質にこだわっている。
回想場面では、次のシーンに移行する際、音を先行させて、映像を後で切り替えるパターンが多用されている。編集作業が大変そう。
クドカン作品にありがちな、長い回想シーンを減らして、スピード感を重視している。回想シーンは現在の必然性の裏付けとしてきちんと機能。長めの回想シーンとして目立ったのは、坂間家における、まりぶとゆとりの会話くらい。このシーンは後の展開に向けて重要だった。この場面のゆとりの衣装がわかりやすかったのは、演出上の計算か。
ゆとりモンスター、山岸ひろむを演じる太賀が迫力あり過ぎ。なんとチョロの息子とか。ジキルとハイドを演じ分ける、まさにモンスター役者。手塚とおると対談した番宣を動画で見たが、素のしゃべりもしっかりしている。今後の作品も楽しみ。
普通の会社の場合、坂間は山岸の先輩であって、上司ではない。会社勤めの経験がある人は「上司」というセリフが何回も出てくることに違和感を感じるはず。しかし、もしかするとこれは、「会社に勤めた経験のないクドカンが脚本を書いてますよ」というフィクションであることの但し書き的な意味かも。

「重版出来!」との比較
このドラマのレベルの高さは、同時期に放送されている、TBSの「重版出来!」と比較すると分かりやすい。「重版出来!」は、ストーリーが安直過ぎる、稚拙な演出によって役者が全員下手に見える、など、登場人物のキャラクターが扁平なドラマで、「ゆとりですがなにか」とは対照的。「重版出来!」は、マジで見ていると恥ずかしくなってくるほどで、ながら視聴向け。

主題歌の映像
バンド演奏シーンがモノトーンに近く、曲中に挿入するドラマを目立たせている。日本テレビ側がドラマに合わせて撮ったのかも。大河の真田丸もそうだが、やる気のあるドラマは、ドラマの内容を挿入して、オープニング曲の時間を無駄にしない傾向がある。「SPEC」もそうだった。

ハゲタカとの比較
「ハゲタカ」のドラマの映像はNHKの職員が撮ったとは思えないほどレベルが高かった。結果として、演出の大友啓史氏は後に、映画監督に転身。しかし、「ハゲタカ」は6回の変則編成ドラマ。「ゆとりですがなにか」は通常のワンクール。通常の編成のドラマで、この演出レベルは脅威。

タイガー&ドラゴンとの比較
クドカン脚本の傑作、「タイガー&ドラゴン」は何回見てもおもしろい。ストーリーのスピード感が究極レベル。だが所詮、演出がちゃち。対して「ゆとりですがなにか」は本格派。

主題歌 感覚ピエロ「拝啓、いつかの君へ」
この曲はバックの音とボーカルがいきなり同時に始まる。ライブの時はどうやってスタートのタイミングを決めているのか、不思議? ギターがわざと下手に弾いているとしたら、天才。
このマイナーバンドの大抜擢は、日本テレビの大英断。挿入歌の「O・P・P・A・I 」もドラマにハマり過ぎ。シナリオ中の「おっぱい」は、彼らの曲に合わせたクドカンの当て書き? だとしたら、昔の曲の一節を作品タイトルに持ってきた、是枝監督に近いものが。

第1話
「ゆとりですがなにか」と岡田将生が松坂桃李に答えるシーン。「SPEC」の第1話で、当麻紗綾が「いらっしゃいませ」と言ったシーンに相当するくらい印象的。しかし、当麻の訳ありな感じに対して、岡田将生演じる坂間正和は何も考えていないところが対照的。
島崎遥香による「意識高い系」のヘンな面接。あまりにも唐突な展開だったが、実は強烈なフック(引っ掛け)。「遅刻したから、開き直って本来の自分を出した」と、後の回で説明あり。このシナリオは全体が高度なパズル。
安藤サクラがアパートの2階から駆け降りて、チャリで坂間たちを救出に向かうシーンのスピード感が最高。途中、チャリで橋を渡るのだが、このアパートのロケーションは水田氏もお気に入りのようで、その後も何度か登場。
坂間の兄夫婦になかなかしゃべらせなかったのは、「ふぞろいの林檎たち」を意識させるためか。

第2話
坂間が例のアパートの2階から出て、チャリで店に向かうシーン。長回しで見せることで、坂間を演じる岡田将生が、視聴者の見えないところで階段を走って降りていることがわかる。下でスタッフがチャリを持ってスタンバっているにしても、岡田はリアルに走っているとしか思えないスピード。第1話で安藤サクラがチャリを使うときは早送りの映像テクニックを使ったが、今回は役者の身体でスピードを表現。
その前のシーンの安藤サクラのセリフ「ごめん。聞いてなかった」。
家政婦問題。母親の「多数決にする」に対して、家族みんなが「なんで」。
坂間がパワハラで訴えられたことを、最後の最後まで引っ張ってから、妹に向けた本人のセリフで開示。

第3話
重要キーワードの「友達」と「友達じゃないね」を繰り返し提示。このキーワードが後の展開に意味を持ってくることに。

第4話
校舎内に響く「童貞は黙ってろ」のフレーズに連動し、なぜかスローモーションで転がるボール入れのカゴ。
同時進行で登場人物たちを巡っていくシーン。先に登場している人物の心中と連動させて、他の人たちをリレー形式で見せていき、最後にラインのメッセージを見ながら登場人物たちが合流。このドラマのスピード感の象徴。
自転車を引いて3人で歩いているシーンの長回し。演技が難しそう。第3話にあった、自転車を引いて2人で歩いている遠景との対比。ちなみに、第3話の演出は水田氏ではない。
「芸能人じゃないんだから」のセリフ返し。

第5話
タクシーを拾うシーンには、演出サイドの気合いを感じた。会話している二人のところへ、遠くに見えるタクシーが次第に近づき、岡田が手を挙げて停める。二人の会話とタクシーの到着時間を計算したうえでの、凝った作り。屋外の撮影では、このように奥行きを感じさせるシーンがいくつかあった。たとえば、第3話の川沿いの道のシーン。男子3人が会話している奥で、女子3人が戯れていて、後に合流するという展開の長回し。このシーンは演技も撮影も難しそう。この場面とのダブりを避けるため、第3話では自転車を引いて2人で歩いているシーンを遠景にしたのかも。それとも、海街diaryの遠景ツーショットを意識したのかも。
メールの顔文字(困った顔)を頼りに、ぱるるを見つけるレンタルおじさん。
高度なパズルがさらに進化して、中国語の前振りが登場。このエスカレート具合は驚愕もの。クドカン・ワールドの極致か。
スマホで終わる恋は、鳥の民のシーンで矢本悠馬が前振り。
映像的なこだわりという点では、さすがの水田氏にも疲れが見えてきたような。水田氏には身体を壊さない程度にがんばってほしい。第5話は、映像よりも、演技の見せ方が売り。日本アカデミー賞女優、安藤サクラが活躍。
ストーリー的には、クドカン代表作として無事に着地してほしいという意味から、ハラハラドキドキ。体操競技の鉄棒のように、着地に注目。

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コメント 1

(。・_・。)2k

軽いカメラでも画質良くなってますからねぇ
すごく興味の湧く ドラマみたいですね

by (。・_・。)2k (2016-05-14 12:11)